「何で風音さんが急に冷たくしだしたのかは分からないけど、理由があるんだよね?あるなら……教えてほしい。」

 それは半分、願いのようなものだった。

 風音さんに本当のことを言ってほしい、俺の願いだった。

 俺の”避けだした理由”という言葉にあからさまに反応を見せた風音さん。

 ……何があったの?

 そう聞きたかったけど、ぐっと我慢する。

 これは風音さんから離してもらったほうが良いし、催促するような真似なんてしたくない。

 そんな俺に風音さんは言葉にならないような声を漏らしながらも、ぽつりと話し出してくれた。

「冷たくしてたのは、本当にごめん。」

 最初に聞こえたのは謝罪の言葉。

 その声が絞り出したようなか細い声で、こっちまで悲しくなってくる。

 だけどきっと、この様子から察するに風音さんはもっと悲しい思いをしてると思った。

 それが知りたくて、風音さんの言葉に耳を傾け続ける。

「じ、実は、この前……珠洲島君を外で見かけたの。」

 外?

「それで……その時に、珠洲島君が綺麗な女の人と歩いてるところを……見ちゃって……。」