あの女の人と珠洲島君の姿を思い出しては苦しくなる。

　……何で今更気付いちゃうかなぁ。

　こんな気持ちになってからじゃないと気付かないなんて……馬鹿だというしかない。

「あはは……。」

　自嘲気味に零した乾いた笑みはその場で消えていく。

　誰も掬い取ってはくれずに、今の私の情けない気持ちみたいに。

　あの女の人、綺麗だった。

　珠洲島君に良く釣り合っている美人さんで、自分なんかって思ってしまった。

　……恋なんて、しないほうが良かったのかな。

　こんな苦しくて悲しい気持ちになるなら、元々恋なんてしなききゃ良かったんだ。

　こんなこと今になって思ってももう遅いことは分かってる。

　……だから、もうこの際元に戻ろう。

　珠洲島君と会う前の自分に戻って、それまで通りの生活をして……忘れたほうが良い。気にしないほうが良い。

　珠洲島君と会う前の自分なんて、良くは覚えてない。

　でも冷たくあしらうのだけは得意だったから、もうそれで良い。

　半ば投げやりになっている自分の気持ちの歯止めなんて利かず、そう思うしかなかった。