ガチャッと家の扉を開けて、中に入る。

「ただいま。」

 小さな声で言ったはずなのに、奥のリビングからは「おかえり~。」という声が聞こえた。

 もちろん、声の正体は分かっている。

 はぁ……とため息を吐きながらリビングに向かった。

「環、おかえり~。」

「おっ、環帰ってきてたんだ。」

 そこにはソファに座ってスマホをいじっている珠梨(じゅり)姉さんと夕食の準備をしている(れい)姉さんがいた。

「姉さん、変なもの調べないでよ。」

 俺はそう言いながら珠梨姉さんに近づいて、スマホを取り上げた。

 そこには案の定、俺を女装させるための商品検索結果が並んでいた。

「……姉さん、ほんとやめて。」

 俺は姉さんに呆れて、何も言えなくなってしまった。

 何故か知らないが最近、姉さんたちがやたらと俺を女装させたがる。

 嫌だって毎回言ってるのに……。

 玲姉さんはまだ良いほう。問題は、珠梨姉さん。

 暇な時にはネットで調べているし、俺のサイズまで測られそうになる時もしばしば。