いっちゃんもクラスメイトも部活で忙しくしているころに図書室へと足を運ぶ。

 珠洲島君と会うのを若干楽しみにしていて、いつもより早く着いてしまった。

 珠洲島君来てないよね……と思ったけど、そんなことはなく奥の机でボーっとしている珠洲島君を見つけた。

「珠洲島君、定期考査お疲れ。」

 近づきながら声を掛けると一瞬肩を揺らした珠洲島君がゆっくりと振り返った。

「風音さんも、お疲れ様。」

 珠洲島君もそう言ってくれ「ありがと。」と小さく返す。

「手応え、どうだった?」

 聞かないほうが良いかも、と思いながらも聞いてしまう。

 珠洲島君はうーんと考えてから口を開いた。

「結構できたほうだと思うけど……風音さんは?」

「私も。特に数学が凄くすらすら解けて自分でもびっくりしてるんだ。」

 感謝の気持ちを込めてそう伝えると珠洲島君は柔らかく微笑んだ。

「あんな説明でも参考になった?」

 あんな説明って……先生になれるレベルだったと思うんだけど。

 もっと自信を持ってもいいと思う、と心の中で言ってから「凄く分かりやすかったよ。」と励ますように言った。