少し心配になって彼女と目線を合わせるために少しかがんだ。

 そうすると、彼女は突然はっとしたような素振りを見せて急いで立ち上がった。

「お、起こしてくださってありがとうございます!ご迷惑かけてすみませんでした!」

 そう早口で言って、足早に図書室を去ってしまった。

 引き留める間もなく、その場には俺だけが取り残された。

 ……何だろう、あの子。

 見た感じは俺と同じ二年だと思うけど、あんなに綺麗で可愛い子、見たことがない。

 それに、雰囲気が他の人と違った。

 穏やかで柔らかい空気が彼女の周りに漂っているように感じた。

 ……って、何で俺は彼女のことを考えているんだろう。

 我に返って、最終確認を再開する。

 そろそろ閉めようかな、と思っているとおもむろに図書室の扉が開いた。

「珍しいな、環が起きているなんて。」

 そう俺に声をかけた人物が近づいてくる。

「直月、俺のこと起こしに来てくれたの?」

 俺がそう言ってからかうと、直月は眉間に皺を寄せた。

「あぁ、そうだ。お前はいつも自分では起きないからな。」