冷酷少女の複雑な恋模様

 なんていうか……言うのも失礼な気がするけど、いっちゃんの教え方が壊滅的に下手だった。

 ハイテンションに加え、早口だから理解が追い付かず私はポカンとするだけだった。

 ……あっ、そういえば。

 その時にいっちゃんがこう言っていたことも思い出す。

『珠洲島君にでも教えてもらえば良いんじゃない?珠洲島君、理系は強いらしいから。』

 いっちゃんにそんな提案をされて、いつぞやの結城先生の言葉も同時に思い出した。

『数学なら珠洲島君に聞いてみたらどうですか?』

 先生からもそう言われるってことは、それだけいい成績だってこと。

 聞いてみてもいいけど、珠洲島君面倒だとか思わないかな。

 珠洲島君も定期考査の勉強はしたいだろうし、邪魔だけは流石にしたくない。

 うーん、だけどこのままじゃ理系が終わる……。

 一人で変な葛藤をしていると、突然後ろから声をかけられた。

「風音さん、さっきから落ち着かない様子だけどどうかしたの?」

「……落ち着いてなかった?」

 びっくりして後ろを振り返ると、不思議そうな顔をしている珠洲島君の姿が視界に映った。