だからって、風音さんは取らせない。

「風音さんの気持ちは俺がもらう。絶対にね。」

 俺はそう言って図書室から一旦出た。



『澪は、俺のだから。』

 お昼にぽつりと呟かれた言葉に、俺は挑発的に答えた。

『君に気持ちは向かないと思うけどね。』

 今考えれば相当、最悪な先輩だろう。

 だけど、好きな人を出されたら誰だってこうなるでしょ。

 指くわえて見てる訳にもいかないし、何より彼女を愛しいと思っての行動だから。

 ……だけど風音さんの気持ちが分からない限り、下手な手段には出られない。

 彼は相当風音さんに惚れ込んでいるようだし、愛が重たそう。

 一人でそう思ってふふっと笑う。

 はぁ……ここまで人のために動けたのって初めて。

 ふと、そんなことが頭に浮かんだ。

 振り返って考えてみても、俺から他人にはあんまり干渉はしなかった。

 別に誰がどうしようが、俺には関係がないから。

 でも……好きな人ってだけでここまで行動力は上がるものなんだ。

 恋の力って偉大だなぁ、なんて思い図書室に戻る。