その時、慶君が何かに気付いたように声を上げた。

「澪、ごみついてるよ。」

「え?どこ?」

 突然言われた言葉に自分自身の体をペタペタと触る。

 どこだろう……?

 そんな私に慶君はまた笑って、「顔についてる。」と教えてくれた。

「取ってあげるから、目瞑って?」

 続けざまに言われた言葉に取ってもらったほうが早い、と思いながら目を瞑る。

 でも、なかなか慶君は取ってくれない。

 どうしたんだろうと思って目を開けた時、誰かにばっと後ろから抱き着かれた。

 反射的に驚いて後ろを振り返る。

 私の視界に映ったのはここにはいなかったはずの……珠洲島君。

 珠洲島君の表情をちらっと見ると凄く怖い顔をしていた。

 い、いつもの珠洲島君と……違う。

 慶君のほうに視線を向けてみると、何故か慶君も怖い顔をしていた。

「……何ですか、先輩?」

 先に口を開いたのは慶君で、その声はいつものものとは全然違っていた。

 いつもより格段に低く、挑発するような声色。

 その言葉に珠洲島君は軽くあしらう。