風音さんにバレないようにため息を吐いて俺はこっそり肩を落とした。



　書店を出て、元来た道を歩く。

　風音さんは相変わらず、涼しい顔で本を持って歩いている。

　男なのに……なんて思っていたら、不意に風音さんが口を開いた。

「……久しぶりに、誰かと外に出たかも。」

「……そうなの？」

　その言葉に思わず反応してしまう。

　風音さんは無意識だったのか、はっとしながらも続けてくれた。

「最近は時間もあんまり取れなくって外出なんてしないから、新鮮で楽しかった。それに、友達とだなんて……願い事が叶ったみたいな気分。」

　……友達、か。

　風音さんの本音が聞けて嬉しい半分、友達だという認識に不満を持っている自分がいた。

　そりゃあ俺だって最近気持ちに気づいたから両思いになりたいなんてこと、わがままなのはわかってる。

　それでも……何処か、寂しい気持ちだった。

　だけど、風音さんが楽しいと思ってくれたら……いいか。

　俺は一人そう思って、「そっか。」と返す。

　その時、ふとある事が頭に浮かんできた。