そう思い、風音さんのほうに目を向けてみると、俺は思わず目を瞠ってしまった。

「か、風音さん……重たくないの?」

 そう、彼女は俺より本をたくさん持っているのにも関わらず、涼しい顔をしていたんだ。

「……?大丈夫だけど。」

 す、凄い……。

 涼しい顔をしたまま、サラッとそう言ってしまう風音さんに苦笑いを浮かべた。

 好きな子より弱い自分って……どうなんだろう。

 ましてや、俺は男だから余計にそう思ってしまう。

「珠洲島君こそ、大丈夫?」

 風音さんは本を持ったまま俺に近づき、首を傾げてそう聞いてくる。

 ま、まぁ……大丈夫なんだけど。

 素直に首を縦に振ると、風音さんは「そう?無理はしないでね。」と言って持ってきた紙袋に本を入れていた。

 俺もあらかじめ先生から渡されていた紙袋に本を何冊か入れていく。

 何だろう……この情けなさと言うか、負けたような感じは。

 別に何かを競っているわけではないけど、変な脱力感に襲われる。

 ますます風音さんの謎が深まった気がするなぁ……。