学校に行かなきゃならないから制服だけど、休日に会うのは初めてで妙に緊張する。

「珠洲島君?どうしたの?」

「……ううん、何でもないよ。」

 黙っている俺を不審に思った風音さんが、おもむろに声を上げる。

 俺は緊張しているのを悟られないように、話を逸らした。

「風音さん、そろそろ行こうか。」

「うん、そうだね。」

 風音さんの少しわくわくしている声を聞いてから、俺は歩き出した。



「久しぶりにバスなんて乗ったかも。」

 バスを降りてから独り言のように呟いて、行ってしまったバスのほうを見る風音さん。

「そうなの?」

 思わずそう聞いてみると、俺には聞こえてないと思ったのか一瞬目を見開かせた。

「うん。高校生になってから乗る機会も減って……ちょっと新鮮だった。」

 ふふっと微笑む風音さんに俺も笑みを返す。

 相変わらず、当たり前だけど可愛い。

「俺も最近はあんまり乗らなくなったかな。」

 思い出したように俺もそう言う。

 風音さんは「みんなそうなのかな……。」と呟いてから書店に向かった。