「珠梨は何言っても聞かないわね。」

 ……言うことがない。

 珠梨姉さんに呆れすぎて、もうものも言えなくなってしまった。

 これは……玲姉さんに足止めしてもらわないと。

 それに珠梨姉さんの尾行癖、治さないとなぁ……。

 俺はそう思いながら、出かける準備をした。



 この辺りでいいのかな?

 待ち合わせ場所に着いて、時間を確認する。

 待ち合わせ時間が十五時だから……うん、まだ時間あるね。

 今の時間が十分前だから風音さんはまだ来ていない。

 周りをきょろきょろと確認してみても、姉さんは追ってきていなくてほっと胸を撫でおろす。

 姉さんが来てたら……風音さんが連行される。

 珠梨姉さんは興味を持った人間にはとことんぐいぐい行くタイプだから、風音さんとは会わせないようにしないと。

 ここに来る前に玲姉さんに足止めを頼んだから大丈夫なはず……。

 そうやって確認していると、ある声が聞こえてきた。

「珠洲島君、来るの早いね。」

 声のしたほうを振り返ると、そこには風音さんが立っていた。