冷酷少女の複雑な恋模様

 風音さんのことを意識してからというもの、今日一日で何回彼女のことを考えていたのか分からない。

 でも、好きな子にはどう接するのが正しいんだろう。

 好きな人なんてできたことないから、そういうのは全くと言っていいほど分からなくて頭を抱えた。

 その時に、タイミングが良いのか悪いのか俺の部屋の扉がガチャっと開いた。

「環ー辛気臭い顔してるねー。」

「……ノックくらいしてよね。」

 扉から顔を見せたのは少々面倒くさい姉、珠梨姉さんだった。

 相変わらず、プライバシーの欠片もない人。

 俺が迷惑と言う意味を込めてため息を吐くと、姉さんは何やらにやにやし始めた。

「……何、姉さんちょっと気持ち悪いよ。」

「わぁ、環は辛辣だねー。」

「辛辣で結構だよ。」

 そんなコント紛いのようなおふざけに付き合っていると、姉さんが空気を変えるように咳払いした。

「で、結局のところどうなのかな?」

 何の話?

 俺がそう聞こうと口を開いたとき、姉さんから驚くべき言葉が出てきた。

「環、誰かに恋してるでしょ。」