冷酷少女の複雑な恋模様

 その時、図書室の扉がガラッと開いた。

「よ、よかった。あのね、もう帰る時間で申し訳ないんだけど……。」

 扉から顔を覗かせたのは図書館司書の田辺先生だった。

 申し訳ないって……どういうことだろう?

 私が疑問に思っていると珠洲島君が代わりに聞いてくれた。

「先生、どうしたんですか?」

 先生は少し言いにくそうにしながらもある言葉を口にした。

「二人に、少し頼まれてほしいの。」



「つまり、私と珠洲島君で書店に本を取りに行けばいいんですか?」

 先生の頼み事のことを詳しく聞いてみると、どうやら新しく学校図書用の本を書店に取りに行ってほしいというおつかいだった。

「えぇ。本来なら先生が行けばいいんだけど生憎用事が入ってて……書店の店員さんも忙しくてこっちに来れないみたいだから……。」

 なんだか、大変そう……。

 でも……そういうことなら引き受けられる。

「私は良いですよ。」

 そう微笑んで答えると先生は顔をぱあっと輝かせた。

 だけど同時に珠洲島君のほうを心配そうに見ている。