冷酷少女の複雑な恋模様

 珠洲島君、今日も寝てる……。

 机にうつ伏せになって気持ちよさそうに寝ている彼からは全くと言っていいほどあの時の面影はなかった。

 あんなにはっきりという珠洲島君なんて、初めて見たかもしれない。

 いつものほほんとしていて何も考えてなさそうなのに、助けてほしい時は助けてくれる。

「ほんと、ありがとね。」

 小さく呟いた感謝は静かな空間に消えて溶けた。

 よし、仕事しようかな。

 私は気合を入れて、いつもの作業に取り掛かった。



「あ、おはよう珠洲島君。」

 しばらくしてからカウンターの影からひょこっと顔を出した珠洲島君。

 瞼は相変わらず重たそう……。

「風音さんおはよう~。」

 ……寝起きは、いつも以上にのほほんとしてるな。

「そろそろ下校時間来るけど……帰る?」

 もうそろそろで六時になりそうだから私はそう提案してみる。

 珠洲島君はすぐに首を縦に振ってくれた。

 じゃあ私も準備しなくちゃいけないな。

 私は近くに置いておいた通学バッグを整理する。