冷酷少女の複雑な恋模様

 ――珠洲島君が助けてくれたってこと。

 なんだかこのままの勢いだと、いっちゃんも知ってそうなんだよね。

 そんなことを思っていると、いっちゃんがこう言った。

「そういえば、珠洲島君が部活棟のほうに向かっていくのを見たって子がいたんだけど……本当なの?」

 ……やっぱり、そう来るよねー。

 もうごまかしようがないと思った私は、正直に今日あったことを話した。

「女の子たちに呼び出されたとき、珠洲島君が助けてくれたんだ。」

 嘘はついてない……はず。

 女の子たちから平手打ちとかされたのは……黙っておこう。

 あの女の子たちもしたくてしたわけじゃない気がするから。

 口にそう出すと、いっちゃんはうーんと唸ってから口角を上げた。

「へぇ~、そうなんだ~。あの珠洲島君がね~。」

 単語ばっかり呟くいっちゃんに首を傾げる。

 何一人で呟いてるのかな……。

 私は気になって聞こうとした時、いっちゃんの言葉にうっと言葉に詰まった。

「助けてくれた後、どこ行ってたの?」

 いっちゃんも場所までは流石に知らないようで尋ねるように聞いてくる。