冷酷少女の複雑な恋模様

 確認を取るようにそう聞いてくる珠洲島君。

 私はその言葉に小さく頷いた。

「……うん、まぁ。」

 なんだか気恥ずかしくなってしまい、小さくそう言葉にする。

 一瞬だけ珠洲島君と目が合う。

 その時の珠洲島君の表情は……とても綻んでいる気がした。



 あの後、授業が終わるまで私たちは保健室で談笑していた。

 久しぶりに珠洲島君と言葉を交わして……とっても楽しかった。

「風音さん、本当にいいの?」

「うん。ありがとう、珠洲島君。」

 授業が終わって更衣室に戻る途中、「近くまでついていくよ?」と提案してくれた珠洲島君に首を横に振った。

 流石にそこまでしてもらうのは悪いからね……。

 本当は少しだけ不安だけど、そんなことを言っている場合じゃない。

「じゃあ……気を付けてね。」

 珠洲島君はそう言って、踵を返して行ってしまった。

 私は更衣室に向き直り、一回深呼吸をする。

 ……大丈夫。

 私は自分を励まし、意を決してドアを開けた。

 その途端、目の前が真っ黒になる。