さっき泣いたおかげで、もうずいぶん調子はいい。

「珠洲島君のおかげで、もうすっかり元気だよ。」

 私、お姉ちゃんの前でも泣いたことは未だないのに……なんだか珠洲島君には曝け出せちゃうんだよね。

 珠洲島君は意表を突かれたような表情をしたけど、すぐにいつもの表情に戻った。

「風音さんは……あんまり泣かないタイプ?」

 うっと嫌なところを突かれてしまって、必死に言葉を選ぶ。

「……そう、だね。あんまり人前では泣かないかな。」

 家族の前でも滅多に泣かない。

 泣くとしても、一人の時が多かった。

 泣くのも数えるほどしかないけれど。

 泣くことは……弱音を吐きだすことと同義だと思ってる。

 私は外側の顔を繕っているからこそ、余計に弱音なんて出せない。

 でも……私、まだ泣けたんだ。涙を零すことができたんだ。

 久しぶりに出した涙は、溜まっていた分が溢れていくように流れていった。

 泣くことなんて、忘れたと思ってたのに。

 そう考えて、あることに気づいた。

「授業、途中でしょ?珠洲島君、戻ったほうが良いんじゃ……。」