珠洲島君はその言葉達には何の反応も示さず、私のほうに歩み寄ってくる。

 そのまま、女の子たちから私を隠すように立ちはだかる。

「女の子同士でも、暴力はダメだよ。それに……。」

 一旦言葉を切って、真剣な声色で言い放った。

「もう……風音さんには金輪際、近寄らないで。」

 その言葉とともに、足音が離れていくのが分かった。

 ……っ、珠洲島君にも迷惑、かけちゃった。

 関係ない、珠洲島君を……。

 私はそんな罪悪感と、さっきの恐怖と痛みで涙が出そうになった。

 でも、ここで泣いたら余計に迷惑がかかる……。

 それに……弱いところは見せたくない。

 私はさっきよりも下唇を強く噛んで我慢していたけど、珠洲島君がこう言った。

「風音さん、泣いてもいいよ。」

「……っ、えっ……。」

 そんな……そんなことできない。

 驚いて目を見開いている私に、珠洲島君は続ける。

「泣きたい時は、我慢しなくていいんだよ。」

 優しい声色でそう言われるけど、私にはそんなことはできない。