「いや、こんな風音さんを一人にさせるなんてできない。」

 風音さんの言葉に被せるように断言する。

 現に、まだ表情が不安でいっぱいだから。

「もう少しだけ、傍にいさせて。」

 懇願するようにそう言うと、風音さんは躊躇いを見せた後、「……分かった。」と返事してくれた。

「ありがと。」

 お礼を言って風音さんの隣に座る。

 ……そういえば、言っておかなきゃならないことがある。

「ねぇ、風音さん。」

 そうやって声をかけると、風音さんはこっちを見て首を傾げる。

 可愛い、なんて思いながら俺は言葉を続けた。

「最近俺、風音さんのこと避けてたんだ。」

 その言葉を聞いた瞬間、風音さんは薄々気付いていたような、やっぱりと言う表情になった。

「避けてたっていうか、距離を取ってたんだ。けど……」

 避けたくて避けているわけじゃない。

 本当は、君ともっといたかった。

 だけど……。

「俺と一緒にいるせいで、風音さんのことを傷つけたくなかったんだ。」

「……え……?」