しかし最初にした私の覚悟は数時間後には案外必要のないものとなった。
別に徹夜になってもいいほど武との反省会が楽しかったからだ。
「お、今の結構工夫してたな。いい感じじゃね?」
「確かに。あれができるならもう少しアレンジしてもいいかもね。時間差つけるとか」
「そうだな。油断からの防御は難しいし。あの状況でそれやられたら負けるな」
劇長反省会を初めて数時間。
最初こそ、激長反省会に戦々恐々していたが、周りのことを気にせずに集中して見る実戦は案外面白く、私たちはもう何時間も実戦観戦を楽しんでいた。
やはり生徒たちの前だどどうしても〝葉月家の紅様〟を意識しなければならないし、姫巫女の護衛もあったので、今日の実戦を〝楽しく〟見ようとは思えなかった。
ただただありのまま武と実戦観戦をするのがこんなに楽しいとは知らなかった。
1度目では体験していないことだ。
「ふっ」
「ん?何?」
突然、武が小さく笑い始めたので気になってテレビから武へ視線を向ける。
すると武も私の方をとても嬉しそうに目を細めて見ていた。
「いや、楽しいなって。やっぱ、お前といると俺楽しいわ」
「何ぃ?今更ぁ?」
まっすぐな武の視線に少し照れ臭くなる。
私だって武との時間は楽しい。
同い年で同じ次期当主。
私たちは多分1番長い時間を一緒にいる。
だからこそ、お互いが1番の理解者で家族のような存在だ。
「…何があってもお前と一緒がいい。例え紅が悪になって全世界が紅の敵になってもな」
「…急に壮大だね」
機嫌良く笑っている武に私も一緒に笑う。
2度目の武はたまにこの言葉を私に言う。
2度目の最初こそこの言葉を受け入れられなかった私だけど今なら受け入れられる。
きっと2度目の武なら私の側にいてくれる、と。
それがシナリオであり、武の絶対譲れないもののはずだから。
「…俺、いや、私がやられそうになったら助けに来てね。もちろん武がやられそうになったら私が武を助かるから」
「当たり前だろ」
武が不敵に笑いながら拳をこちらに突き出す。
私はその拳に自分の拳をコツンと当てた。



