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実戦大会が終わった夜。
私は自分の部屋のソファの上でくつろいでいた。
「…」
多分もう1度目とはほとんどが違う。
1度目では蒼が2連覇することなんてなかったし、相変わらず姫巫女と守護者たちの距離は空いているし。
姫巫女自身もそれを気にしているし。
このまま現状維持だと世界はどうなるのだろうか。
『今のまま行けば世界は滅びませんよ』
「うわっ」
急に神様に話しかけられて思わず声を出してしまう。
『か、神様!急に何!?』
『まさかここまで驚かれるとは…。もう一年ですよ?慣れませんか』
『驚くよ、普通に』
急に頭の中から声が聞こえるなんて慣れるわけない。
ましてや気を抜いた状態でならますます驚いてしまう。
『それはすみませんでした。次回からはあなたの頭をノックしてから話しかけましょう』
『そんなことできるの?』
『冗談です』
まさかの神様の言葉に驚いていると真剣な神様の声がそれを否定した。
冗談なんかい。
『さて話を戻しましょう。現状概ねシナリオ通りに物事が進んでいます』
『…』
『蒼が2連覇するのも今回のシナオリ通りでした。数ヶ月前の姫巫女の登場以来シナリオの歪みはないですね』
『だからこのまま行けば世界は滅びることはないって?シナリオ通りだから』
『そうですね。シナリオにこの世界が滅びることは記されていませんから』
1度目は高校2年生の春からシナリオが少しずつ歪み始め、最期には世界が滅んだらしい。
今の2度目は1度目のようにそもそもその少しずつの歪みがないのだろうか。
『シナリオに記されていない出来事、それが歪みです。シナリオは絶対で少しの歪みでさえもおかしなことなのですが、1度目の今頃はそれが当然のように繰り返されていました。ですが、今は驚くほどシナリオに歪みがないんです。ただ姫巫女が現れたあの時だけです』
『つまり現状を維持できればシナリオが歪むことなく、世界も滅びない…』
『そう簡単だといいのですが、そうはいかなかったから前回は世界が滅びてしまいました』
『…』
『紅、私は今歪みの中心人物としてあなたともう1人姫巫女を見ています。姫巫女に何かしらの原因があるのではと考えているのです』
『何かわかったことはある?』
『いえ、今は何も。しかし、彼女からは何か違和感を感じるんです。普通の人とは少し違う何かを』
違和感か…。
神様の言葉の意味を私なりに考えてみる。



