「大丈夫ですよ。今はまだ知り合ったばかりで、少し距離があるだけです。あなたらしくしていれば、いずれあなたの望む絆とやらが生まれるはずです」
慰めるつもりなんてなく、1度目の人生を振り返り、本心から私は淡々とそう言った。
蒼たちと姫巫女の距離感は1度目とは少々…いやかなり違う。
だが、それは、1度目の記憶を持つ私が1度目とは違う行動をしているなど、1度目と2度目では蒼たちと姫巫女を取り巻く環境がかなり違うからではないだろうか。
いろいろと違いすぎている現状が姫巫女と守護者たちの距離感を生んでいるんだろう。
「私らしく…か…」
「…」
私の言葉をゆっくりと噛み締めている様子の姫巫女の背中を見守る。
小さく、守りたくなるこの少女をきっとみんな何よりも大事に思うだろう。わかっている。
だが、私はこの愛らしい少女がどうしても苦手だ。
「ありがとう紅ちゃん。ちょっと元気出ちゃった。やっぱり悩み相談は同性の紅ちゃんにするべきだね」
くるりと姫巫女はこちらを振り向いて明るい笑みを私に向ける。
…また私の性別のこと言ってる。
「姫巫女様。性別なのですが」
「あ!ああ!ごめん!つい気が緩んじゃって…。嬉しくて…。本当にごめんなさい」
「いえ」
腹は立つが申し訳なさそうに謝られてはもう何も言えない。
何事もなかったかのように対応するしかない。
「ねぇねぇ紅ちゃん」
「はい」
「私がみんなの輪に入れるように協力してくれる?」
「…俺の協力なんてなくてもあなたはもう輪の中心ですよ。俺にできることなんてありません」
「えー。また意地悪言ってる?紅ちゃん私のこと嫌いだもんねぇ」
「違います」
ブーブー文句を言っている姫巫女の言葉をすぐに否定する。
姫巫女のことは苦手だが、みんなの〝姫巫女様〟との不仲は=学校中を敵に回すことになるので避けたい。
本当に姫巫女ってこういうところでは鋭いよね。
普段何も知りませんって顔をしているのに。



