2度目の人生で世界を救おうとする話。後編






「しょ、勝者、春名蒼様!」



審判の声高らかな勝利判定により、静まり返っていた武道館内から、わあああ!と歓声が上がる。



「す、すごい実戦だったな!」

「決勝戦と言ってもいいんじゃないか!」

「紅様のあの火力、あれは誰にも真似できないぞ!」

「蒼様のあの冷静さ、多彩さ見事だった!」



聞こえてくる声はどれも私や蒼を絶賛するもので私はこっそりと安堵する。

周りから見ても手を抜いているように見えず、尚且つ守護者としての威厳を守れたのなら100点だ。



「…」



蒼が無言でこちらを見ている。
何か言いたげな視線だ。


まさか蒼には手を抜いたことがバレた?
去年の武の時みたいに。



「…強かったね、紅。紅のエネルギー切れがなかったら負けてたよ」



少し警戒しながら蒼を見ていると蒼はいつもの優しい笑顔でこちらに握手を求めてきた。

どうやら手を抜いたことはバレていないようだ。



「勝てると思ったんだけどな。やっぱり蒼は強いね」



今度こそ安堵し、差し出された蒼の手を握る。

私より大きな手。
私とは違う手。
男の子の手だ。



「…敵を倒す為に全力を出さないで」

「え」

「じゃないとこうやってやられてしまうから。相手を倒すんじゃなくて、自分が生き延びられる戦い方をするんだよ」



グイッと握手をしている手を引かれて、蒼の胸の中に私は倒れてしまう。
そして蒼は私の背中に腕を回してぎゅぅっと私を強く抱きしめた。

ずっと張り付いたような笑顔だった蒼が私を抱きしめる直前、少しだけ辛そうな顔をしていた。
どうしてそのような顔をしたのかはわからない。



「…状況に応じて戦うから大丈夫だよ」

「…」



何も言わない蒼を私は優しく抱きしめ返す。
そんな私たちを見ていた武道館中の生徒たちからは何故かスタンディングオベーションが送られた。



「素晴らしい!熱い戦いのあとは熱い抱擁だな!」

「2人の絆を感じる!」

「見ているこっちが泣けてくるよ!」



そしてそれは私たちが離れるまで続いた。