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姫巫女が見ている。
それだけで会場のボルテージが上がる。
「勝者、葉月 朱様!」
審判の勝利宣言と共に毎度のことながら会場から歓声が湧く。
特に四神家の者の実戦は注目度が高く、みんなの視線を集めていた。
「さすが葉月家のご子息様だ!」
「圧倒的だったな!」
「あれで一年生だなんて!四神家はやはり特別だ!」
「美しすぎて変な扉開きそう」
…一部変な声も聞こえてくることが悩ましいが。
私の弟を変な目で見るな!
「兄さーん!」
今、実戦を終えた朱が愛らしい笑顔を浮かべ、嬉しそうに守護者の定位置、姫巫女の側にいるこちらへ駆け寄ってくる。
「どう?兄さん見てくれてた?」
「もちろん。さすが朱、圧倒的だったね」
私に褒められて「でしょ?すごいでしょ?」と嬉しそうにしている朱の頭にどうしても犬の耳の幻覚が見えてしまう。
尻尾をブンブン振っているわんちゃんにしか見えない。
そんな可愛らしい朱の頭に私は思わず手を伸ばしてしまった。
そしてふわりと柔らかい髪に触れるとつい撫でてしまった。
「…!」
やってしまった!
無意識とはいえ、小さな子どもでもない相手の頭を撫でてしまうなんて。
申し訳なくて慌てて朱の頭から手を離そうとする。
すると、朱は可愛らしい顔からは想像できないほどしっかりとした手でそれを静止した。
そして朱はその手を自分の頬へとゆっくりと滑らせた。
私より少しだけ背の高い朱と目線がぶつかる。
朱は甘えるような目で私を見ていた。
「…兄さん、辞めないで」
「…っ」
朱の全てに心臓が跳ね上がる。
こんなの反則ではないか。
これに耐えられる猛者はいるのだろうか。
もし、ドキドキしたら死ぬゲームがあるのなら私もうとっくにお亡くなりになっているはずだ。



