「そういえばそろそろ〝実戦大会〟というものが開催されるそうですね」
「あー。そうだね」
もうそんな時期になったのか、と暁人に言われて思う。
そして1度目の今頃のことを毎度のことながら思い浮かべる。
1度目の実戦大会では自分の実力をただ証明する為に本気で挑み、優勝した記憶がある。
姫巫女も見守る中での実戦大会だった為、あの実戦大会には異例のある〝景品〟があった。
その〝景品〟とは姫巫女からの祝福のキスである。
男子生徒たちはあの美しく可憐な姫巫女から祝福のキスがもらえるということでかなり浮き足立っていたし、誰もがいつも以上に勝利にこだわっていた。
だがしかし優勝したのはこの私。
もうその頃から姫巫女に苦手意識があった私は姫巫女からの祝福のキスをお断りし、そのお断りの影響で姫巫女との不仲を周りにまた印象付けたのであった。
今の実力ならもちろん優勝できるだろうが、1度目のことを考えると優勝しない方が無難だろう。
「生徒同士が実際の戦闘を意識して戦う模擬戦闘ですよね。私の目から見てもアナタが優勝するでしょうね。実力の次元が違う」
「まあ、そうだけど…」
まさかの暁人からのお墨付きとは。
人間含め私のことが嫌いな暁人だが、実力は認められているらしい。
「俺もそう思うが、無理はするな。いつ何が起きるかわからないならな」
「もちろん。油断はしないよ」
「傷一つ作ることさえ許さないからな」
「はは。私を誰だと思ってんの?傷なんて一つさえもつかないよ」
「言ったな?その言葉忘れるなよ」
「はいはい」
自信満々の私を無表情ながらもどこか心配そうに龍が見つめる。
毎度のことながら心配しすぎだと思うが、一度私が死んだ記憶のある龍がこうなってしまうのも仕方ないと思う。
が、そんな記憶なんてない暁人は私たちのこの大袈裟な会話に眉をひそめていた。
「なーに言ってるんですか、龍。アナタの目の前にいる人間はおそらく人類最強の1人ですよ。いろいろおかしいんじゃないですか」
それは本当にそう。



