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1日のどこかで龍のところへ行く。
これが2度目の人生での龍との約束だ。
実体を持つようになり、割と自由になった龍だが、この約束は今でも有効なようで私は毎日どこかのタイミングで龍に会いに行っていた。
今日も朱の追跡から逃れて、姫巫女の護衛の当番ではない放課後に岸本先生こと龍の理科室の個室にお邪魔していた。
「姫巫女、殺してやりたいですね」
自らが用意した紅茶を飲みながら物騒なことをニコニコ笑顔で話し出したのは佐藤先生こと暁人だ。
「あまりにも目障り。何故あのような弱い人間が偉大な大厄災、龍を封印できる唯一なのか理解不能です。あの女さえいなければ妖の世が約束されているのに」
「同意だな。せっかく学校に入れたことだし、隙を見て狙ってはいるが守護者がガチガチに守っているから一切の隙がない」
そしてそんな暁人の話に龍は美しい表情を一切崩すことなく、無表情のまま同意した。
「守護者を1人ずつ戦闘不能…もしくは殺していきますか?」
「それもありだが、そちらに手をかけすぎると本来の目的が達成できないだろう」
「わかっていますよ。我々の本来の目的はあくまで姫巫女の弱点を探る、または殺すこと…ですよね?」
「違う。紅を守ることだ」
「…でしたね。残念ながら。ついでに姫巫女の件も片付けましょう。どちらにしても我々の敵ですし」
「そうだな」
「では姫巫女の件ですが、やはりまずは守護者が目障りなので…」
「あのー。一応ここにその目障りな守護者がいるんですけど」
2人があまりにも妖として話しているので、一応私の存在を申し訳ない程度に手を上げて伝える。
すると龍と暁人の視線が私に向けられた。
「守護者である以前に紅は俺たち側の人間だろう」
「どうして龍がそう認識しているのかわかりませんが、龍のお気に入りである以上、そう思うしかないんですよね。最悪です」
龍からは無表情ながらも不思議そうに、暁人からは不愉快そうに見つめられる。
まあ、私は1度目では完全に妖側の人間だったし、今でも妖と良好な関係を築きたいと思っているけど。
あまりにもオープンすぎる。一応私の所属は能力者、人間側なのに。



