「そっちも美味い?」
「うん。美味しいよ。食べる?はい」
こしあんにも興味を示した武に食べかけの私のたい焼きを差し出す。
すると武は顔をしかめた。
そしてそのままたい焼きを睨みつけた、なかなか食べようとしない。
「いらないの?」
「…違う。食うけどさぁ。お前…。はぁ」
何?
何が不満なの?
…もしかして衛生面でも気にしてる?
「武って潔癖だったっけ?」
「はぁ?何でそうなるんだよ。ばーか」
よくわからないが、何故か武は私に悪態をついてからやっと私が差し出したこしあんのたい焼きをぱくりと食べた。
…半分以上も。
「ちょっと!武!何ほとんど食べてるの!?どういうこと!?」
私の手元に残っているたい焼きはもう三分の一ほどしかない。
武にあげるまでは半分以上もあったのに。
「うるせぇ。ちょっとはそのまま俺に食べさせたこと後悔しろ」
「意味わかんない!答えになってなくない!?」
ふいっとこちらから顔ごと視線を逸らす武に抗議の視線を向けるが、もちろんこちらを見ていないので意味なんてない。
武の耳が赤い気がしたが、おそらく夕日のせいだろう。



