side紅
最近の妖は以前よりもずっと強くなっている。
「武っ!そっち行った!」
私の元から逃げた妖が向かった先は武がいる場所。
あまり妖を殺したくはないが、この妖はあまりにも人を殺しすぎているし、話しても無駄な部類だ。
もう殺すしかない。
「おうおう!待っていたぜ!」
武はそんな妖を見て、やる気満々といった表情を浮かべている。
そして渾身の水の一撃を妖の首にぶつけて首を吹っ飛ばした。
「ぐあっ…」
一瞬だけ聞こえた小さな断末魔と共に妖がその場に倒れる。
妖を殺す1番手っ取り早い方法は首を切り落とすことだ。
武の一撃は妖を絶命させるには十分だった。
*****
夕方の街を武とまるで普通の男子校生のように並んで歩く。
実際には街に現れる妖退治の任務帰りなのだが、誰もそうだとは思えないほど、私たちは街に溶け込んでいた。
「にしても最近任務多いよな」
何となく、といった感じでふと武がそんなことを言う。
本当に特に気にしているのではなく、あくまで話題として言った感じだろう。
「まぁ、そうだね。大厄災の封印が解かれる年だしね」
おかげで世界中に今、大厄災の力が溢れ始めている。
その影響で妖は強くなり、活動的になっていた。
彼らの目的は一つだけ。
自分たちのトップ、大厄災の復活。
その為に彼らは動いているのだ。
「大厄災…やっぱり、厄介な妖だよなぁ。誰にも殺せないほど強いから封印されているんだもんな」
「そうだね」
眉間に少しだけ皺を寄せている武に私は一応肯定の相槌を打つ。
強くて厄介なのは間違いない。
びっくりするだろうけど、今、世界中が注目している大厄災、龍はうちの学校の職員をしている。
しかもそつなくこなしていて、一部生徒からも「何処となく怖いが、授業はわかりやすい」と支持されているくらいだ。
妖界No.2の暁人ももうすっかり学校に馴染んで、表向きはいい顔で生徒たちといい関係を築いている。
2人が学校に職員として赴任してきて数週間経つが、そんなに気付かれないのか、と思うほど、2人は人間として学校に馴染んでいた。



