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麟太朗様との話を終えて私はまた歓迎会会場に1人で戻っていた。
顔には出していないが、相当疲れた。
「…」
ため息をつきたい気分だが、それをグッと我慢する。
「紅、戻って来ていたのか」
そんな私に1番最初に声をかけてくれたのは琥珀だった。
「うん。今戻ったところ」
「…そうか。麟太朗様とはどんな話をしたんだ?」
無表情だが、心配そうな目で琥珀が私を見る。
…本当のことは言うべきじゃないよね。
もし本当のことを言ってしまえば、私がどんなに否定しても、〝私が姫巫女を嫌っているかもしれない〟という情報が琥珀に入ってしまう。
そういうところから私はどんどん独りになってしまうのだ。独りにならない為にもそこは徹底しなければ。
「…最近の調子についてかな。いろいろあったから」
ポーカーフェイスも嘘も得意分野だ。
だが、今の私は随分歯切れが悪い。
「…」
そんな私を黙ってじっと琥珀は見つめる。
お願い!これ以上何も聞かないで!
と、心の中で必死に祈っていると琥珀は「そうか」
と少しだけ寂しそうな表情でそう言った。
嘘だと気づいている表情だ。
琥珀の表情に私は少しだけ胸が痛んだ。



