「兄さん、飲み物持ってきたよ」

「朱」



何となく姫巫女と蒼を見ていると、後ろから朱が声をかけてきた。



「ありがとう」

「お礼なんていらないよ。僕が取りに行きたくて行っていたんだし。お茶でよかったでしょ?」

「うん」



にっこりと愛らしく笑う朱から私はコップを受け取る。
飲み物を取りに行ってくれた朱に私は特に何が飲みたいとかリクエストはしていない。
それでも私が飲みたいものを的確に選んでくるなんてさすがすぎる。



「食べ物もすごく美味しそうだったよ。兄さんが好きそうなものは一通り見たからあとで一緒に取りに行こうね」

「本当?何があるんだろう?楽しみだな」

「ふふ。きっと兄さん食べたいものがありすぎて困っちゃうと思うよ」

「えぇー。それは困ったな…」



なんて平和な時間なんだろう。
朱と2人で和やかに笑い合えさえできればもう何もいらないかも。



「おい、そこの異常に美少年な2人」



そんなことを思いながら和やかな気持ちで朱と笑い合っていると機嫌の悪そうな武の声が聞こえてきた。



「武?」



声の方へ視線を移せば、そこには声と同じように不機嫌な表情を浮かべている武と何も考えていなさそうな無表情の琥珀がいた。



「何?何かあった?」

「はぁ」

「…?何?」



意味がわからないのに武は首を傾げている私にただただ呆れたようにため息を出すだけで。


…何で?