この学校を去ってからもちろん朱と一緒にいる時間もぐっと減った。
前まではほぼ朱と四六時中一緒にいたのだが、今は違う。お互い住んでいる場所も立場も何もかも違うので、今までのようにいられないのも当然だ。
と、いっても、かなりの頻度で仕事の関係でよく学校へ行くので、こうして朱と会ったり、朱もよく葉月に帰ってくるので、四六時中一緒ではなくなったが、一緒にいる時間が全然ないわけでない。
「…やっぱりもっと姉さんと一緒にいたいな。一緒に暮らしたい」
ふと朱がそんなことを切実に言う。
「僕、姉さんがいないとダメみたい」
それから朱はその場で足を止めて、寂しげな表情でこちらを見た。
強い太陽の光が朱の美しい顔に影を作る。
「…姉さんと一緒がいい。僕は姉さんを愛しているから」
ゆっくりと朱から紡がれた言葉。
その言葉が私の心臓を大きく跳ねさせる。
朱が私に向ける愛が家族へのものではなく、異性へと向けるものだとはわかっている。
だからこそ、こんなにも心臓が跳ね、うるさいのだ。
「姉さんも僕と一緒だったらいいのに」
私を見つめる朱の瞳はドロドロに甘い。
だが、その表情は変わらず寂しげだ。
私の気持ちが自分にはないのだと信じて疑わない表情だ。
「…朱は私を愛して、私を守る為に、私を監禁までしたんだよね。それから世界を滅ぼした」
「…え」
朱に応える為に開かれた私の口から出た言葉に朱が固まる。
朱は私が2度目の人生を生きていたことを知らない。そして朱も同じだったということも知らないと思っている。だからきっとそれを知っている口ぶりの私に驚いているのだろう。



