「あ、紅様だ」
「本当だ」
とぼとぼと廊下を歩いていると、どこからか生徒たちの声が聞こえてきた。
何となく声の方へと視線を向けると、教室からゾロゾロと人が出始めている。
どうやら授業が終わったらしい。
「…美しいよな、紅様」
「女の子だったのも頷ける」
「あれで強いとか反則じゃね?」
「あの若さで妖側との交渉の一線に立っているらしい。しかも新しい組織のトップらしいぜ。妖対応対策本部だったっけ?」
私の姿を遠目から見て、ざわざわと生徒たちが騒いでいるが、かつて私に向けていた憎悪や怒りのものはない。
物珍しさや敬意のあるものだ。
姫巫女が現れる前とある意味同じような視線なので特に気になることもなく、慣れたものだった。
「紅!」
生徒たちの視線に晒されながらも廊下を進んでいると、遠くの方から聞き慣れた声が私を呼んだ。
生徒たちの奥でこちらに片手をあげて嬉しそうに駆け寄る武の姿が見える。
「今日こっちで会議だったんだな」
それから武は私の隣まで来ると当然のように私の隣に立ち、今まさに自分が走ってきた道を私と歩き始めた。
「…疲れたよ。会議」
「はは、だろうな。そう顔に書いてある」
「わかる?」
「わかる」
武の答えにちょっと驚いて武を見れば、武がおかしそうに私の眉間辺りをツンっと人差し指でつつく。
私はもう次期当主ではなくなったが、今の役割をきちんと果たす為にも、自身の威厳を保つように心がけている。なので、今も他の者の目があるので、次期当主をしていた時と同じように、相手に感情を読ませない表情を意図して作っていた。
だが、さすが幼馴染である武だ。
武にはそれが通用しないらしい。



