1人で納得していると神様はそんな私に感心したように笑い、「やはり紅はすぐに理解してくれるので助かりますね」と言っていた。
「この先、もうこの世界が滅びることはありません。そうシナリオに記されています。少なくとも紅が生きている間は、ですが」
「…そっか」
ふふ、と優しく微笑む神様に私は安堵の息を漏らす。
そんな私を見て神様はその緑色の瞳を細めた。
「これから先の未来はシナリオを管理する神のみぞ知る世界。アナタはこれから普通の人間として私の世界で生きるのです。幸せになるのも、不幸になるのも、アナタ次第なのですよ」
「うん」
神様の言う通りだ。
本来、人間は自分の未来なんて知らない。
今回はシナリオが歪み、世界が滅んでしまったので、たまたま神様に選ばれた私がそのシナリオの歪みをなくす為に、2度目を生きられただけだ。
これから続く未来ではもうその必要はない。
「…紅、ここでお別れです。アナタと関われたこの約3年間、本来の目的のこともあり、大変な面もありましたが、とても楽しかったです。シナリオの歪みの中心はアナタではありませんでしたが、あの時アナタを選んで本当によかった」
まるで人形のような美しい男が優しく私の頬に触れる。
それから私という存在を確かめるように何度も何度も私の頬を撫でた。
「私の愛し子、どうかこの先の未来も幸せでありますように。大丈夫。アナタならきっと幸せな未来を切り拓ける」
「…うん」
これが最後なのかと思うと、胸の奥底から寂しさが込み上がってくる。
この世界のことを呪いながら死んだ私が、人間を誰も信じられなくなった私が、もう一度前を向けて、この世界を呪わなくなったのは、2度目を与えて、いつも側にいてくれた神様のおかげだ。
神様のおかげで私は今誰のことも呪わず、前を向けている。



