「さて。まずは物語の結末から見ましょうか」
安心している私をちらりと見てから、神様が少しだけ向こうの方へと視線を向ける。
するとそこからみるみると色が着き始め、その色はやがてここを能力者の学校の上空へと変えた。
私と神様は今、学校の真上に浮くような形で学校を見下ろしている。
最初に神様と会ったあの日と同じように。
そしてそんな学校にはあの日とは違い、たくさんの人がいた。
生徒や教師、それから能力者やその関係者などが思うがままに自由に校舎内を動き、生きている。
校舎もまたあの日見たボロボロに破壊され、廃れてしまったものではなく、よく見慣れたきちんとしたものだった。
「…これは?今の学校?」
「ええそうです。姫巫女がこの世界から消滅したことにより、シナリオの歪みもなくなり、世界は正常に戻りました」
私の疑問にすぐに神様が答えてくれる。
世界は本当に救われたらしい。
何も変わらずに平和の広がるこの光景を見れば、そうだと確信できる。
「姫巫女は元は違う世界の人間でした。そしてその違う世界の神の加護を反則級の力で受けていたのです。ですから神である私でさえも姫巫女をどうすることもできませんでした。なので私はその違う世界の神へ姫巫女の加護の没収と、姫巫女自身をこの世界から回収することをお願いしたのです」
私たちの足の下で、自由に動き回る人間を慈悲深い瞳で見つめながら、淡々と神様が今まで何が起きていたのか、私に説明していく。
私も神様と同じように何となく、足元の人間へと視線を向けると、神様の説明によって新たに浮かんだ疑問を口にした。
「加護の没収は何となくわかるけど、姫巫女の回収って何?姫巫女が消えたことと関係がある?」
「はい。あります。姫巫女の回収、それはすなわち、姫巫女のいた世界の神が姫巫女の魂を回収し、元の世界へと戻す、ということです。
あの場面で姫巫女は朱に殺されるシナリオでした。
もし、あちらの神が朱に殺され、魂だけとなった姫巫女を回収しなければ、彼女はまた私の世界へと転生したでしょう。別の世界の人間は私の管轄外です。今回のシナリオの歪みのように何かが起きる可能性だって十分にあります。ですから姫巫女の回収もお願いしました」
「…なるほど」
神様の丁寧な説明に私は深く頷く。
朱の炎によって、燃やし尽くされ、灰になるはずだった姫巫女が、光輝き光の粒子となり、消えていったあの不思議な現象を私は思い出す。
あの不思議な現象はきっと今神様が説明した通り、姫巫女が自身の世界の神様に回収されていた時のものだったのだろう。



