姫巫女が何も言えなくなり、いよいよ炎が姫巫女の全身を蝕み始めたその時。
姫巫女の体がキラキラと輝き始め、本来灰になり散るものが、光の粒となり、少しずつ消え始めた。光の粒を撒くように消える姫巫女の体はどこか儚く、美しいものだった。
そして程なくして、姫巫女の体は全て光の粒となり、キラキラと輝きながら姿を消した。
見たことのない光景に私を始め、この場にいた者は全員言葉を失った。
今、目の前で起きたことは何だったのか。
『ま、間に合ってよかったです…』
「か、神様!」
突然、私の頭の中に聞こえてきた神様の声に私は思わず、反応する。
…やってしまった!
急に「神様!」と言った私をこの場にいる全員が聞き流すはずもなく、不思議そうな視線が私に集まる。
…龍を除いて。
龍だけは「何やっているんだ」と呆れたようにこちらを見ていた。
「か、神様のところに姫巫女は行ったのかなぁって思って…。姫巫女って神の使いみたいな存在な感じがするし」
へへ、と誤魔化すように笑い、この場にいる全員を一瞥する。
すると蒼、琥珀、武、朱から怪訝な表情をされた。
全員の声を代表するように武が「あれは神じゃなくて悪魔の使いだろ」と言った時は思わず、吹き出しそうになった。
言いたいことがわかりすぎるし、例えもよすぎる。
『全く、紅は気が抜けていますね』
『いやまぁ、この状況だとね。それで姫巫女はどうなったの?シナリオは?世界はもう滅びない?』
『ふふ、聞きたいことがたくさんですね』
当たり前だ。
私の質問攻めに笑う神様に私は当然だと頷く。
今まで何のために行動してきたと思っているのだ。
全ては世界を滅ぼさない為、救う為に動いていたのだ。
聞きたいことは山積みだ。
『そうですね。すぐにお教えしたいところですが、アナタの方が限界みたいです。また後でお教えしましょう』
『え』
神様の優しい声が突然そこで終わる。
私の限界?
そこまで考えると急に視界がぐにゃりと歪んだ。
あ、そうだ。
私、ボロボロで満身創痍だった。
そしてそのまま私は意識を失った。



