「…みんなおかしいよ?私は姫巫女なの。ヒロインなの。何をしても許されるの。なのにどうして悪者の肩を持つの?ねぇ、蒼くん。私の王子様。私の王子様ならちゃんと私を助けてくれるよね?」
炎に囲まれて、熱せられていく姫巫女が、おかしそうに笑う。
まだ希望を持つその瞳に蒼を映して。
「…王子様?」
私に覆い被さっていた蒼が上半身だけ体を起こし、そのまま、倒れていた私の体も起こして、自身の腕の中へ入れる。
それからいつもと同じ何を考えているのかわからない、まるで言葉の通り、王子様のような笑顔を浮かべた。
「僕はお前の王子様じゃない」
そこまで言って、蒼が私の両耳を塞ぐ。
これでは蒼が何を言っているのかわからない。
「叶うならこの子の王子様になりたかった」
何かをどこか辛そうに言った蒼が私の両耳から手を離す。
蒼は私の耳を塞いでまで何を言ったのだろう。
「嘘!うそうそうそっ!そんなの嘘だよ!私は信じない!蒼くんは私の王子様で…」
「はい、おしまい」
「え…ぎゃあああ!!!」
絶叫する姫巫女に朱が冷たくそう言い放つと、姫巫女を囲む炎がさらに強さを増す。
その炎に囲まれながら姫巫女は苦しそうにその場にしゃがみ込んだ。
「お前に時間を与えたのは絶望させる為だよ。絶望したままこの世から消えろ」
冷たい表情で姫巫女を見る朱の手によって、姫巫女の体がどんどん燃えていく。
最初こそ、痛みや熱で叫んでいた姫巫女もいつの間にか何も言わなくなった。
いや、何も言えなくなったのだろう。



