「私の要求を渋る理由を教えてください。あの人間はアナタの愛し子なのですよね?」
「…」
責めるように私にそう言われて、神が気まずそうに黙る。
愛し子…それは私でいう紅のような存在のことだ。
世界のシナリオを管理する者として、世界を見ているうちに気に入ってしまった存在のことを私たち神は愛し子と呼ぶ。
愛し子になった人間は気に入られた神によって違うが、大なり小なり様々な恩恵を受ける。
ずっと気にかけてもらえるので、どうしてもダメな時や、ピンチな時などに、神の力によって、どうにかなってしまったり、紅のように2度目の人生を生きられたりと受けられる恩恵は神によって本当に様々だ。
姫巫女も紅と同じようにその愛し子だ。
それにより、彼女もまた特別だった。
それも神である私の手に負えないほどの。
しかも姫巫女は元は私の世界の人間ではない。今、目の前にいるこの神の世界の人間だ。
「…彼女は私の世界で可哀そうな一生を送った人間です。彼女にはたくさんの夢があり、希望もありました。ですが、幼い頃から病に冒されていた彼女では、それは叶いませんでした。自分と同じ歳の娘たちはたくさんの夢を持ち、希望に溢れていたというのに。彼女はいつも泣きながら神である私に願っていたのです。幸せになりたい、と。彼女が死んだのは15歳の時でした」
神がどこか辛そうに淡々と姫巫女の事情を説明する。
そして神は姫巫女が自身の世界で死んだ日のことを事細かく話始めた。
*****
白に統一された清潔感のある病室で彼女は苦しみながら息を引き取った。
同じ歳の娘たちと同じように夢と希望で溢れていた彼女が、その夢や希望を何一つ叶えられないまま朽ちていったことが、憐れで憐れでならない。
幼い頃から病に冒され、夢の一つも叶えられないまま、死ぬ。彼女と同じような存在は案外どこにでも存在しており、いちいち胸を痛める対象ではない。
だが、彼女はとても可憐な見た目をしており、その見た目で毎日泣きながら神へと祈る姿はいつも神である私の興味を引いた。
最初は何て儚く可憐な存在なのだろう、と彼女を認知する程度だったが、やがて彼女のことがどんどん気になり始め、しまいには自ら彼女の様子を見るようになっていた。
私は彼女の健気な姿に絆された。



