「…わ、私、何もしていないよ?シナリオ?とかもよくわからないし、世界をぐちゃぐちゃにしているのはどちらかといえば紅ちゃんの方でしょう?紅ちゃんが悪の道に進まなければこんなことには…」
「しらばっくれても無駄だから!私には神様の声が聞こえるの!だから全部知ってるの!アンタの選択で世界は滅びるんだよ!?もうやめてよ!」
「…は?」
最初こそしおらしい態度だった姫巫女から驚くほど、低い声が出る。
初めて聞くその声があまりにもいつも聞く姫巫女の声とは違ったので、驚きのあまり、炎の壁の向こうのさらに奥にいる姫巫女を私は凝視する。
すると、そこには先ほどまで可憐で、弱々しかったはずの姫巫女が、何も感じられない無表情で立っていた。
…あんな姫巫女1度目でも見たことがない。
「…神様の声お前も聞こえるの?嘘だよね?みんなの特別になれなかったからそんな嘘をついているんだよね?」
おかしそうに表情を歪めて笑う姫巫女はもう庇護欲を煽るような存在ではない。
そこには儚さも弱々しさもない。
これが姫巫女の本性なのだろう。
「嘘じゃないよ。神様に頼まれて、私はこの世界を救おうとしているからね。神様の声くらい聞こえるよ」
「…は?世界を救う?それはヒロインである私の仕事でしょう?いよいよ頭でもおかしくなったの?」
ついに本性をあらわにした姫巫女に私は真剣に事実を伝えてみたが、姫巫女はおかしそうに笑い、信じようとはしない。
…頭がおかしくなったのか、と言いたいのはこちらだ。
ヒロインの仕事とはどういうことだ。



