「…蒼、武。もうやめて。私は蒼とも武とも戦いたくない。こんなこと不毛なだけだよ」
このまま戦えば、私はきっと殺される。
なので、何とか蒼たちを説得し、私への攻撃をやめさせようとする。
だが、炎の壁の向こう側に立つ蒼と武は何も言わず、ただ無表情にこちらをぼんやりとした瞳で見ていた。
…やはり、初めて蒼たちを見た時にも思ったが、守護者たちの様子がどうもおかしい。
守護者全員、表情がなく、生気がない。
喋りもせず、ただ淡々と私と龍に攻撃をする今の守護者たちは、まるで誰かに私たちを殺せ、と命令されて動く生気のない人形だった。
少なくとも1度目はこうではなかった。
1度目の蒼たちには明確な意思があったし、喋る姿も見た。
今の蒼たちは何かがおかしい。
そこまで考えてふと神様が言っていたことを思い出す。
姫巫女も私と同じ神様の介入を受けている人間だと。
その介入が果たして私と同じ内容なのだろうか。
姫巫女はまた違う形で神様の力を借りているのではないだろうか。
例えば今の蒼たちのように対象の人物を思うがままに操る、とか。
「姫巫女!」
考えれば考えるほど深くなる疑念に私はついに姫巫女に向かって叫ぶ。
ここから少し離れた安全な場所で、心配そうにこちらを見ていた姫巫女は私に叫ばれ、怯えた表情を浮かべた。
「ねぇ!姫巫女!私はもう全部知っているんだよ!?アンタのせいでシナリオが歪んで、世界がぐちゃぐちゃになっていることを!蒼たちにも何かしたんでしょう!?」
「…っ」
私に遠くから叫ばれ、姫巫女がその元から大きな瞳をさらに大きく見開く。
驚いているような、怯えているような表情を浮かべる姫巫女は相変わらず庇護欲を煽る存在で、可憐で儚かった。
だが、私からすれば、ただ被害者ぶっているだけの存在だ。姫巫女のその表情のせいもあり、腹が立って仕方がない。



