「…大丈夫。人間側から離れた時点でいつかこうなることはわかっていたから」
不安げに私を見つめるあや婆に私は優しく笑う。
「さあ、私のことはいいからみんなに指示を出して。私は行くよ」
そしてあや婆に背を向け、この広間を出る為に歩き出した。
「紅!お願いです!生きて帰って来てください!」
後ろから私の無事を願う切実なあや婆の声が聞こえる。
私はそれに応えるように右手を軽く上げ、この部屋を後にした。
*****
聖家を出て、少しした開けた場所。
まだ全然聖家のよく見えるその場所には龍の姿があった。
「龍!」
見慣れた龍の後ろ姿に私は駆け寄る。
そんな私を見て龍は「来たか」と小さく呟いた。
「…1度目と同じだよね」
「…ああ」
私の問いかけに龍が苦虫を潰したような顔をする。
…私が殺されたことを思い出してのことだろう。
「前回やられた理由はアイツらの連携に翻弄され、俺たちが離れてしまったことだ。逆に言えば、俺たちは離れさえしなければ互いに補完し合える」
「うん」
もうすぐあの向こうから姫巫女たちがやって来る。
それを迎え撃つ為にも私と龍は互いに黙り、目の前へと集中する。
今、まさに戦いが始まろうとしている緊張感の中、私の頭の中に神様の酷く焦っている声が響いた。



