1度目とまるで同じだ。
1度目も人間が知るはずのないここへと何故か姫巫女たちは突然やって来て私たちを襲撃したのだ。
またシナリオが歪んだということなのか。
「皆さん。落ち着いてください」
全員がどうすればいいのかわからず、右往左往している中、この広間に凛とした声が静かに響く。
「ここからは離れましょう。このような事態に陥った場合の秘密の場所があります。かなり遠いですがそこへ行くのです」
凛とした声の持ち主、あや婆がここにいる全員を見据える。すると先ほどまで騒がしかった広間は一気に静まり返り、あや婆の言葉に耳を傾けた。
それからあや婆の指示に従い、全員が動き始めた。
新たな安全な場所へと移動する為に。
「あや婆!」
「あら、紅」
忙しそうに妖たちへと指示を出すあや婆に私は声をかける。あや婆はそんな私を、どうしたの?と言いたげな目で見つめてきた。
「私が姫巫女たちの相手をするからそれなりに時間は稼げると思うけど絶対に止められる保証はできない。だから時間はあるけどのんびりしすぎないように逃げてね」
「…紅は人間の相手をしてくれるのですか」
「うん。私、これでも人類最強って言われていた逸材だから。心配はいらないよ」
私の話を聞いて表情を曇らせたあや婆を安心させるように私は不敵に笑ってみせる。
ここではあまり強い能力を見せてこなかったので、あや婆も私のことを心配してくれているのだろう。
「…紅。私ももう何千年と生きた妖です。アナタの強さなら見ただけでも十分伝わっていますよ。私が心配しているのはそこではありません…」
あや婆がそう言ってどこか言い辛そうに瞼を伏せる。
だが、数秒後、あや婆はまた私の瞳をまっすぐ見て遠慮がちに口を開いた。
「…相手はかつてのアナタの仲間なのでしょう。かつての仲間と戦うなんて辛くないはずがありません。きっと最前線には他の強い妖たちが立ってくれます。アナタも私たちと逃げるべきです」
ああ、あや婆は私の心のことを心配してくれていたのか。
思慮深く慈愛に満ちたあや婆らしい考えだ。



