2度目の人生で世界を救おうとする話。後編





side紅



聖家に来て3ヶ月。
季節は秋から冬へと変わった。

相変わらず聖家での日常は平和そのものだ。
たまに暴れる妖が現れたら対処に行くが、その程度で1度目の時のように人間側と戦うことはしていない。
きっとそうならないように意図的に龍がしているのだろう。

このままずっと平和だったのならどれほどいいのだろうかと思う毎日だが、そうもいかないのが現状だ。

私ではなく、姫巫女を中心に歪んでしまった世界がいつ、私を殺してしまうのかわからない。
神様の言う歪みの原因を取り除かない限り私は死ぬし、それに絶望した朱がまた世界を滅ぼすのだ。

本当の平和を手に入れる為にはやはりシナリオの歪みをなくさなくてはならない。
その為に神様は今、いろいろと奔走しているらしい。
私や龍はそんな神様の次の指示待ちだ。


聖家の縁側を歩きながら空を見上げる。
昼下がりの空には分厚い雲が広がり、冷たそうな風がもう葉の落ち切った木を揺らしている。
そろそろ初雪が降り出しそうなそんな天気だ。

雪が降ったらみんなでかまくらを作ろう。
中に七輪を入れてお餅を焼くのだ。
大きな雪山を作ってソリで滑るのもきっと楽しい。

もうすぐ降り始める雪へと思いを馳せながらも笑みを深めたそんな時だった。



「しゅ、襲撃だ!」



誰かの切羽詰まった声がどこからか聞こえる。


襲撃?


この時期の突然の襲撃。
嫌な予感しかしない。

声の方へと早足に向かうと、広間で1人の妖が血相を変えてその場にいる妖に叫んでいた。



「に、人間…いや、あれは姫巫女だった!姫巫女が守護者を連れてここへ向かっている!もうアイツらに見つかってしまったやつらはやられた!ここも安全ではない!早く逃げた方がいい!」

「に、逃げた方がいいってどこに!?」

「こ、怖いよっ」

「私、殺されちゃうの?」



状況を説明する妖に広間にいた妖たちが様々な表情を浮かべている。
焦っている者、恐怖で固まっている者、理解が追いついていない者、様々だ。

広間は一気にパニックに陥った。