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神様が龍に助けを求めると言った夜。
窓一つない部屋で1人寝ていると、微かに扉が開く音が耳に入り、私は目を覚ました。
扉からこちらに誰かが近づいてくる足音がこの静かな部屋に小さく響く。
その足音はある場所で止まると、今度はカチャン、と私を閉じ込める鉄格子に触れる金属音が聞こえてきた。
音の方へ視線を向けると、そこには小さな炎をいくつも従えた龍が立っていた。
「…龍っ」
ガバッとその場から体を起こして、私はベッドから飛び降りる。
そしてそのまま鉄格子の方へと駆け寄った。
「…紅、遅くなってすまない」
鉄格子に囚われている私を龍が痛々しいものでも見るような目で見る。
そんな目で見られるほど酷い対応はされていないのだが、心配する気持ちもわかる。
私は龍に「謝らないで。来てくれてありがとう」とにっこりと安心させるように笑った。自分は何もされていない無事だと少しでも伝わるように。
「…信じられないが神とかいうやつに事情は聞いた。とりあえずここから逃げるぞ、紅」
「うん」
龍が私の返事を聞いたのと同時に鉄格子の一部を炎で燃やす。
さすが封印されているとはいえ、大厄災だ。
いとも簡単に鉄格子の一部を灰にしてしまった。
私はそこから鉄格子の外へと出た。
「…怪我はないか」
改めて龍が私を憂いを帯びた瞳で見つめる。
「大丈夫。閉じ込められていただけで酷い対応を受けていた訳ではないから」
「そうか。それじゃあ行くぞ」
「うん」
力強く頷いた私の右手を龍が掴む。
そして私は龍の力によってこの葉月家を後にした。



