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誰か嘘だと言ってくれ。
次に私が目を覚ますとそこはよく知らない豪華で洗練された美しさのある和室だった。
まさか私が朱に負けた上に意識まで奪われるなんて。
状況を確認する為に心地の良いベッドから私は体をゆっくりと起こし、まずはじっくりとこの部屋を観察する。
まず一番に目を引いたのは立派な鉄格子だった。
部屋の三分の一の向こう側の行手を阻む鉄格子の先には扉がある。おそらくあそこが出入り口なのだろう。
さらにこの部屋には窓もなかった。
あまりにも私を閉じ込める強い意志を感じるこの部屋に私は朱の本気を感じてしまう。
だが、私を閉じ込めようとする強い意思があるだけで、この部屋はそれ以外は必要なものなど一通り揃えられている洗練された美しい部屋だった。
ベッドや机、ソファだけではなく、立派な本棚もあり、そこにはたくさんの本まで揃えられている。
さらにこの部屋を知ろうといろいろなところを見ていると、今度は鉄格子に阻まれていない扉を見つけた。
そこに何があるのかと確認する為に私はやっとベッドから出る。そしてそこで初めて今の私の格好に私は気がついた。
葉月家に来た時に着ていた学校指定の男子制服から白いワンピースへと変わっていたのだ。
「…」
女物の服はあまり着慣れていないのでおかしな感覚だ。
足がスースーして何だか心許ない。
誰がこんな服に着替えさせたのか。
…おそらく朱なのだろう。
つまり朱に下着姿を見られた可能性があるのか。



