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どんなに足掻いてもついにこの日がやって来てしまった。
「今から紅の罪について会議を始める」
いつも穏やかな麟太郎様がいつもの場所で怒りに満ちた表情で本日の議題を言う。
姫巫女が階段から落ちて数日後。四神屋敷では麟太郎様、守護者、姫巫女が集まり、ある会議が行われようとしていた。
私が姫巫女にしてきた数々の罪についての会議である。
…いや、身に覚えのない会議なのだが。
まあ、1度目も全く同じ展開になったのでもう驚きはしないが。
「…由衣、怖いかもしれないが言ってご覧」
麟太郎様の席の横に用意されている椅子に座る姫巫女に麟太郎様が優しく話を振る。
すると姫巫女は泣きそうな顔で証言を始めた。
「…こ、紅ちゃんが怖いの。目が合えばいつだって睨んでくるし、2人きりの時は嫌味を言われるし、きょ、教科書とかもね、ボロボロになっててね。私、紅ちゃんのこと疑いたくないけど紅ちゃんがやってたってクラスの子が教えてくれて…」
姫巫女の証言に頭を抱えたくなる。
全くどれも嘘ではないか。
百歩譲って睨んでくるくらいは認めるとして、私は姫巫女に嫌味なんて絶対に言っていないし、教科書だってボロボロにしていない。
もし腹いせでボロボロにするのならせっかく火の能力者なので燃やして消し灰にするくらいはする。
それなのにこの女、やっぱり1度目と同じ嘘を言いやがった。
姫巫女が言っていることは真っ赤な嘘だと言うのに麟太郎様は辛そうにしている姫巫女を哀れそうに見て「辛かったね。よく言ってくれた」と言っていた。
…麟太郎様の悪口は言いたくないが、言わせてもらう。
節穴にも程があるぞ、麟太郎様!
「由衣への態度を改めない限り、こちらにも考えがある、と前に言ったのを覚えているかい?紅」
「はい」
姫巫女に向けていた優しさはどこへやら。
麟太郎様の鋭い視線が私を貫く。



