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「今年はいよいよ大厄災を封印する年です。姫巫女ももうじき我々の前に現れることになるでしょう。ですから今年は…」



初頭部から高等部の全ての生徒が集められたホールでは厳かに始業式が行われていた。
ステージ上から全生徒に向けてお言葉を告げられている麟太朗様は相変わらず美しい。

腰まである艶やかな黒髪は痛みを知らず、ホールの照明に照らされてさらに輝いている。

目鼻立ちもしっかりしているので、遠くから見ても麟太朗様の美しさは十分に伝わるだろう。


私たち能力者のトップである四季家の現当主、麟太朗様のお言葉を皆、静かに前を見据えて聞いていた。



ホールには全生徒が座る席と職員が座る席、それから麟太朗様と私たち次期当主が座る席が用意されている。
麟太朗様や次期当主が座る席は特別で1番前だ。

なので私たち次期当主は1番近くで麟太朗様の話を聞いていた。



「麟太朗様、ありがとうございました。それではここでみなさんに連絡事項をお伝えします」



麟太朗様の話が終わると、進行役の先生にマイクが渡る。
いくつか簡単な連絡事項がその先生から伝えられた後、最後に全生徒の前で新しい職員が紹介されることになった。



「岸本先生、佐藤先生お願いします」



進行役の先生に声をかけられて2人の新しい職員がホールのステージ上に上がる。

全校生徒はそれを興味津々に見つめていた。


この学校に新しい職員が来ることは滅多にない。
ここは能力者の中心部であり、大事な機関でもあるため、常に強い能力者や教育に長けた能力者が集まる場所だ。

だから人の入れ替わりはあまりなく、新しい職員が来たとしても、どこかで必ず見たことのある顔馴染みの能力者が担当することが多かった。


それがステージ上に上がった2人は一切見たことのない能力者だったので生徒たちは騒ついていた。



「見たことない顔だな」

「どこの家紋の血筋なのかな」

「どんな人なんだろう」



ざわざわとする生徒たちからそんな声が聞こえる。
厳かな始業式にしては珍しい光景だった。


1度目のこの時、新しい職員が紹介されることなんてなかった。
いつもと変わらない始業式が滞りなく行われていたはずだ。