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私がどんなに火消しをしても火は燃え続け、やがて学校中が私の悪い噂で持ちきりになった。
私にも聞こえる声で私に対して不満や悪口を言うのは当たり前で、時には小さいことだが、私にぶつかるなど危害を加えようとする生徒まで現れる始末だ。
そんな生徒たちにはもれなく全員に炎をプレゼントしていたが、そろそろ葉月の威厳を保つのも限界が近かった。
こんな状況なので1度目と同じように身に覚えのない噂で私は孤立していく…と思われたが、2度目の今回は違った。
琥珀を始め、武、蒼、朱は何故か1度目のように噂を信じることはなく、むしろ私の味方でいてくれたのだ。
だから私は1人ではなかった。
龍も一応暁人もいるし今の私には心強い味方がたくさんいる。
『それでもこの状況は異常です!』
姫巫女の護衛として姫巫女の後ろを歩く私の頭の中に神様の訴えかける声が聞こえてくる。
『1度目と同じなんですよ!シナリオの歪み方が!本来アナタは生徒たちからこのような扱いを受けません!シナリオにはそう記されていないのですよ!この意味がわかりますか!?』
焦っている様子の神様の声に私は表面上は冷静にだが、心の中では今の状況に不安を抱いた。
神様がここまで焦るほどシナリオが歪んでしまっているのだ。不安にもなる。
『今の状況が最悪ってことだよね。やっぱり姫巫女と関わるべきじゃない』
『そうです!』
神様の断言に私は心の中でだが頷く。
やはり早く次期当主の座と守護者の席を朱に渡さなければならない。
そうでなければ最悪世界滅亡再びだ。
「ねぇ、紅ちゃん」
私の前を歩いていた姫巫女が突然その足を止める。
「紅ちゃんって私のこと嫌いだよね。私、いつも紅ちゃんが怖いの。本当は仲良くしたいのに」
くるりとこちらを振り向き、私を見つめる愛らしい瞳には涙がいっぱい溜まっていた。
どうして急にこんなことが始まったのか。
だが、しかしこの場面に私は覚えがあった。
1度目も全く同じ状況になったからだ。
「ど、どうしたんだろう?」
「由衣ちゃん泣いてない?」
「またアイツが由衣ちゃんに何かしたのか?」
少し前までは私に一応〝様〟をついていた生徒たちもいつの間にか私を〝アイツ〟呼ばわりだ。



