ゆるふわな黒色メガネくんは魔法使い




この光景を見るのは何度目か数えたらキリがない。



「51ページの最初からね」



それだけ言って先生は教壇へ戻った。



「は~い」



眠そうな目をこすって、彼は朗読を始めた。



朗読を始めれば教室はまた静かになり、彼の声に聞き入る。



私は彼の声が好き。



高くないけど、低すぎるわけでもない低音よりのトーン。



心にスッと入ってくるし、心を震わせられる。



今年初めて同じクラスになって未だちゃんと話したことはないけど、初めて彼の声を聞いた時から心に残ってる。



こんな素敵な声の人がいるのかって衝撃を受けたもん。



だから朗読で彼があたった時は嬉しい。



思う存分彼の声を聞けるから。



私が勝手に思ってるだけなんだけど、ひそかな楽しみ。