保健室に到着してすぐに、俺はベッドに倒れ込む。


 頭に痛みが響いて、目を開けることすらままならなかった。


 俺を連れてきてくれた女子はカーテンを閉めると、保健の先生と会話し始める。


「ありがとうね、羽入さん」

「いえいえ~。彼、途中まで一人で頑張ってたみたいですから、わたしはちょっとしか手伝ってないですよ~」


 羽入さん、って言うんだ……。


 お礼、言いたいのに。体がうまく動かせない……。


「担任の先生や親御さんに連絡しなくちゃね。一応熱も計ってもらって……」

「あ、体温計はわたしがやっておきますよ。先生はご連絡お願いします」

「本当? じゃあよろしくね」


 パタパタと一人が保健室を出て行く音。


 次いで、カーテンが開かれた。


「ちょっと熱計るね~? こっちでやるから、眠ったままで大丈夫だよ」


 首元に何かが触れる感覚がして、シャツのボタンが外されていく。


 俺は最後の力を振り絞って、薄く目を開けた。


「……ありがと、ございま……」


 視界はぼやけてよく見えない。


 だけど、彼女が優しく微笑んだことだけはわかった。


「ふふ、どういたしまして~。もうこうなるまで無理しちゃ、だめだよ~?」


 その柔らかくて温かな声と、首筋に触れる冷たくて気持ちいい手が、俺の心を和ませた。


 羽入さん……一体どんな人なんだろう……。